世界遺産の福建土楼に宿泊!

こんにちは!尾形雄樹です!

古くは12世紀に建てられ、円形・四角形の広場を中心に囲む形式の集合住宅であり、世界遺産にも登録されている【福建土楼】に行ってきました。

福建土楼の場所はこちら ↓

福建土楼は福建省に散在する土楼の集合を指す名称であり、龍岩市永定県の「永定土楼」と漳州市南靖県の「南靖土楼」の大きく2つに分類されます。今回は初期に建造され最大の高さを誇る「裕昌楼」と、上部から土楼群が見られる「田螺抗土楼群」を含む南靖土楼に行ってきました。

漳州市街地からバスとタクシーを乗り継ぐこと4時間、南靖土楼に到着しました。

今回の記事では5階建ての規模がある「裕昌楼」をメインに紹介していきます。


■外部

まず外観。でかい!

建物のシンプルな形態と規模の大きさから思わず見入ってしまいます。

立面に開けられた窓は4階以上のみという規則性はありますが、その中でどこに開けるかは不規則です。また厚みのある壁のため、窓サッシの設置位置は場所によって内側や外側になっています。

宿泊した部屋では、外側と内側に1か所ずつの開口がありました。

部屋の開口:外側方向
部屋の開口:内側方向
網戸にパンダがいました。右下をよーく見てみてください。
屋根に沿って溝が掘ってあり、排水溝の役割を担っています。
1.5~2.0mの厚さがある壁とはいえ、土壁であるため大小のひび割れが散見されました。
土楼によっては手の届く範囲で部分的に補修されていました。
消火の送水口も外部にしっかり設置されています。

■内部

外との唯一の出入り口となります。扉上部には木のまぐさによる補強がされています。(注:まぐさとは、窓や出入り口など、開口部のすぐ上に取り付けられた部品のこと)

中央に大きく広場を囲む構成は、自然と目線や向きが中心へ引っ張られる方向性を持つ空間です。

そのためか裕昌楼では中心にお寺がありました。他の土楼では1階の入り口正面にお寺が配置されているものもありました。


■構成

壁は土壁・レンガ状のブロックで厚みがあるため、平面上の住戸間の音・熱の遮断効果は高いですが、床は板のみのため、上下階の音・振動は直に伝わります。

階段内部の壁仕上げ
床は板張り

1階の壁は縦格子にメッシュ状のシートが張ってあるだけでしたが、雨は内部まで入って来ないとのこと。おそらく上部がせり出している建物の構成と5層分の高さがあるためだと考えられます。


 

■構造

柱スパンは約2~3m間隔で1室が納まっています。

構造は柱と梁の構成ですが、上段が下段よりせり出している構成となっているため、上階の柱は岡立ちの状態となっているのが非常に興味深いです。

構造上合理性を考えると下段を増やすことの方が自然ですが、そうではなく中央の広場スペースを確保しつつ、床面積を増やす方針によるものであったとすれば、この時代から縦に建物を積層し、床面積を確保するという高層建築物につながる考え方であったということとなります。

もちろんこの時代と建物の建設経緯を考慮すると、土地面積の制限から密度を高めるというよりは、外敵から守るために建築面積(上部からの投影面積)を最小限に抑えつつ、なるべく多くの人が生活できるようにという考えだったのだろうと推測できます。


■設備

<水回り>

キッチン周りでは油はね防止のために透明なシートがはられていました。

2階から上階へは水道がつながっていないため、水回りは全て1階にまとまっています。建物の内周に沿って排水溝があり、そこに水道が設置されキッチンも置かれています。

シャワーは1階の室内にあります。

トイレは土楼の側に別棟で建っており、雑排水と下水が分けられています。

1階の室内に井戸があるお宅もありました。

土楼の横を川が流れているため、そこを水源に水が確保できているのだと考えられます。

お茶をごちそうしてくれたおばあちゃん

<電気・通信設備>

電気は入口横にまとまっており、梁に沿って配線されています。

インターネットはWi-Fiがあるほどで、携帯電話も普通に使用されています。


■生活

内部には生活風景が投影されており、洗濯物は上階のみにあるということや窓の設置から生活の基盤(プライベート空間)が上階にあるということが推測されます。

距離による離隔はありますが、キッチン・ダイニングが1階の外部に面して配置されている構成が、土楼全体を円で囲む大きな食卓のような印象を受けました。

建物全体がまるで1つの家族のような暮らし方をしているコミュニティが、他ではあまりみられない光景でした。

仮に今の東京でこれを実践しようとしても実現することは不可能に近いですが、現代において忘れてしまっている昔ながらのコミュニティの在り方のように思われます。

世界遺産の住居をゆっくり堪能し、さらに宿泊まですることができた貴重な体験でした。

朝方の田螺抗土楼群

中国に行く機会がありましたら、福建土楼への訪問を検討してみてはいかがでしょう。

山奥に残る、昔ながらのコミュニティ、福建土楼でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。次回のオガ旅もお楽しみに!

株式会社翔設計、海外特派員の尾形雄樹でした!


“世界遺産の福建土楼に宿泊!” への4件の返信

  1. 初めまして!

    ブログ楽しく読ませて頂いております!
    今回私も土楼に宿泊をしたくご連絡をさせて頂いたのですが、予約はどのサイトからしましたでしょうか?
    検索しても出てこなくて困っております。

  2. コメントありがとうございます!

    私は事前に予約ができず、ダメもとで直接行って泊まれるかの確認をしました。その日は空いており泊まることができました。
    知り合いで昨年行かれた方は、最初の日は空いておらず、塔下村のユースホステルに一泊し、次の日に土楼に宿泊したとお聞きしました。
    改めてネットで調べてみたところ、宿の予約サイトで土楼の宿がありました。

    ★ホテル予約サイト、「ブッキングドットコム」のページに飛びます

    ここは私が行った田螺抗土楼とは別の土楼でしたが、日程優先であればこちらの方がよいかもしれません。
    ご回答しきれていないかもしれませんが、もしまたご質問などあればお気軽にコメントを下さい!

    それではよい旅を!

  3. こんにちは、楽しく読ませていただきました。
    土楼の外見の写真は裕昌楼が中心ですが、お部屋の写真や、トイレの写真、夜の土楼内の写真で真ん中がお堂ではなく井戸であることなどから、お泊りになられたのは文昌楼なのかな?と思いました。
    間違っていたらすみません。お泊りになられた土楼を教えていただけますと幸いです。

  4. コメントありがとうございます!
    私が宿泊した所は「文昌楼」です。
    おっしゃる通り室内の写真や夜の上階からの写真などが文昌楼のものです。
    写真が混在し伝わりづらく申し訳ありません、、
    宿泊の経緯としてはバイクタクシーの運ちゃんに宿泊したい旨を伝えたら
    文昌楼へ案内してくれたという流れでした。
    もし他にも質問などありましたらお気軽にコメント下さい!

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